フォック演算子

量子力学ハートリー-フォック法において、フォック演算子: Fock operator)は、量子系の1電子ハミルトニアンを近似する演算子である。

計算化学において、原子系や分子系のルーターン方程式を解く場合に使われる。フォック演算子は、実際は量子系の真のハミルトニアンを近似したものである。フォック演算子は電子間反発の影響を含んでいる。しかしフォック演算子は1電子演算子なので、電子相関エネルギーを含んでいない。

フォック行列はフォック演算子を行列表示したものである。

閉殻軌道と1次元波動関数を仮定している場合、i番目の電子についてのフォック演算子 F ^ ( i ) {\displaystyle {\hat {F}}(i)} は、

F ^ ( i ) = h ^ ( i ) + j = 1 n [ 2 J ^ j ( i ) K ^ j ( i ) ] {\displaystyle {\hat {F}}(i)={\hat {h}}(i)+\sum _{j=1}^{n}[2{\hat {J}}_{j}(i)-{\hat {K}}_{j}(i)]}

ここで

h ^ ( i ) {\displaystyle {\hat {h}}(i)} i番目の電子の1電子ハミルトニアン
n {\displaystyle n} は系の占有軌道の総数(全電子数 N {\displaystyle N} として N / 2 {\displaystyle \lfloor N/2\rfloor } に等しい)
J ^ j ( i ) {\displaystyle {\hat {J}}_{j}(i)} クーロン演算子で、系のj番目とi番目の電子間の反発力を決める。
K ^ j ( i ) {\displaystyle {\hat {K}}_{j}(i)} 交換演算子で、2つの電子を交換することの効果を決める。

不対電子を持つ系では、フォック演算子の形式は一通りではなく、多くの形式がありうる。

参考文献

  • Attila Szabo、Neil S. Ostlund 著、大野公男、阪井健男、望月裕志 訳『新しい量子化学―電子構造の理論入門』東京大学出版会、1987年。ISBN 978-4130621113。 

関連項目