聖母子と聖カテリナと羊飼い

『聖母子と聖カテリナと羊飼い』
イタリア語: Madonna del Coniglio
英語: Madonna with Rabbit
作者ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
製作年1525年 - 1530年
種類油彩キャンバス
寸法71 cm × 87 cm (28 in × 34 in)
所蔵ルーヴル美術館パリ

聖母子と聖カテリナと羊飼い』(せいぼしとせいカテリナとひつじかい、: Madonna del Coniglio, : Madonna with Rabbit)は、イタリアの画家ティツィアーノ・ヴェチェッリオにより1525年から1530年頃に描かれた絵画である。宗教画[1]。『ウサギの聖母[2]ウサギのいる聖母[3]とも。

聖母マリアを中心とした聖人の集まりが描かれており、聖会話というジャンルに分類される[1]パリにあるルーヴル美術館に所蔵されている[2]

作品

アルプス山脈を遠景に望むヴェネツィアの夕暮れ時の田園風景が描かれている。画面中央に描かれた、赤色のドレスと濃紺のマントを身につけた女性が、聖母マリアである[2]

マリアは、右手で白いウサギを撫でながら、傍らにいる白いドレスの女性に抱かれた自らの息子である幼児、イエス・キリストに視線を投げかけている。古来よりウサギは、肉体的に接触することなく繁殖する動物であると考えられており、このことから聖母マリアの処女性が想起される[2]

マリアの傍らにいる女性は、白い布で包まれたキリストを抱いており、16世紀頃にヴェネツィアで女性の既婚者が一般的に身につけていたような衣服を着ている。彼女は、殉教の印である車輪の上に足を置いていることから、アレクサンドリアのカタリナであるとわかる[2]

マリアの前に置かれた果物かごの中には、リンゴブドウが入れられている。リンゴは、エヴァの原罪を象徴するものであり、ブドウは、ブドウ酒、すなわちキリストの血を意味している。果物かごは、キリストによる贖罪を象徴している。アレクサンドリアのカタリナの足もとには、イチゴが描かれている[1][2]

画面右側では、羊飼いの男性がヒツジの世話をしている。羊飼いは、古代の異教に対してキリスト教が取って代わり、勝利をつかんだことを想い起こさせる[1][2]

科学的調査

エックス線を用いた調査によって、当初、聖母マリアは、羊飼いのほうを向いており、腕を曲げて膝の上に載せていたことがわかっている[2]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d “《うさぎの聖母》 聖なる詩情”. DNPミュージアムラボ. 2019年1月2日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h ジャン・アベール. “ルーペで見る《うさぎの聖母》”. ルーヴル美術館. 2019年1月2日閲覧。
  3. ^ “大英博物館所蔵 イタリア素描展”. 愛知県美術館. 2019年1月2日閲覧。
世俗画
肖像画
宗教画
  • 聖母子とパドヴァの聖アントニウス、聖ロクス』(1508年頃)
  • 『十字架を担うキリスト』(1510年頃)
  • 聖家族と羊飼い』(1510年頃)
  • 新生児の奇蹟』(1511年)
  • ジプシーの聖母』(1511年頃)
  • 『キリストの洗礼』(1511年-1512年頃)
  • 『大天使ラファエルとトビアス』(1512年-1514年頃)
  • 『ノリ・メ・タンゲレ』(1514年頃)
  • サクランボの聖母』(1515年)
  • 『貢の銭』(1516年)
  • 聖母子と聖ドロテア、聖ゲオルギウス』(1516年–1518年頃)
  • 『聖母被昇天』(1516年–1518年頃)
  • 『受胎告知(トレヴィーゾ大聖堂)』(1520年頃)
  • 『キリストの埋葬(ルーヴル美術館)』(1520年頃)
  • アヴェロルディ家の祭壇画』(1520年–1522年)
  • ペーザロ家の祭壇画』(1519年–1526年頃)
  • 『聖母子と聖カテリナと羊飼い』(1530年頃)
  • 『アルドブランディーニの聖母』(1532年頃)
  • 『悔悛するマグダラのマリア(パラティーナ美術館)』(1533年頃)
  • 『受胎告知(サン・ロッコ大同信会)』(1535年頃)
  • 『聖母の神殿奉献』(1534年-1538年頃)
  • シャッラの聖母』(1540年年頃)
  • 『洗礼者聖ヨハネ』(1540年-1542年頃)
  • 『荊冠のキリスト(ルーヴル美術館)』(1542年-1543年)
  • 『この人を見よ(ウィーン)』(1543年)
  • 『悔悛するマグダラのマリア(カポディモンテ美術館)』(1550年頃)
  • 『アダムとイヴ』(1550年頃)
  • 『ラ・グロリア(聖三位一体の礼拝)』(1551年-1554年)
  • 『聖ラウレンティウスの殉教』(1548年-1559年頃)
  • 『キリストの埋葬(プラド美術館)』(1559年)
  • 『ゲツセマネの祈り』(1558年-1562年頃)
  • 『受胎告知(サン・サルバドール教会)』(1559年-1564年頃)
  • アルベルティーニの聖母』(1560年–1565年頃)
  • 『悔悛するマグダラのマリア(エルミタージュ美術館)』(1565年頃)
  • 『聖マルガリタ』(1565年頃)
  • 『祝福するキリスト』(1570年頃)
  • 『荊冠のキリスト(ミュンヘン)』(1570年頃)
  • 『聖セバスティアヌス』(1570年-1572年)
  • スペインによって救済される宗教』(1572年-1575年)
  • 『ピエタ』(1575年-1576年)
関連項目
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